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高血圧ガイドラインに沿って、基準・原因・症状・改善策を解説

こんにちは。かず内科クリニックの院長 中村和宏です。
当院では、治療計画書、療養計画書を元に、高血圧患者さんの生活習慣の見直しを行いながら、高血圧診療を行っています。

下記に一つでも該当される方は、ご相談ください。

  • 血圧の薬は一生飲み続けなければならないの?
  • 血圧の薬を飲んでいれば、減塩しなくてもいい?
  • 血圧が下がったら薬を飲まなくてもいい?
  • 症状がない場合は、血圧の薬を飲まなくてもいい?
  • 朝の血圧だけ高いんだけど…
  • まだ40歳なのに血圧が高いと言われた…
  • 健康診断の時は血圧が高いけど、普段は高くない。
  • 下の血圧だけが高い…

こういった不安がある方はぜひ「かず内科クリニック 神戸垂水」にご相談ください。

安心するためにも、一度検査をされませんか?
何もなければ、「よかったですね」と安心してお見送りすることができますので。

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日本の高血圧患者は約4300万人と言われ、最も注目される疾患の一つです。
それでは高血圧はどのような疾患なのでしょうか?

本記事では、高血圧の基準、疫学、分類、原因、症状、検査、改善策、治療方針について解説します。
これを読めば高血圧の概略が分かります。
高血圧の治療をする際に役立ててみてください。

1.高血圧とは

血圧が一定の基準値を超える場合を高血圧と呼びます。
そしてくり返し測っても高血圧の場合に高血圧症と診断します。
つまり高血圧は症状名であり、高血圧症は病名です。
しかし高血圧症も高血圧と呼ばれることが多いため、本記事では高血圧と記載します。(参考資料1

1-1.血圧とは

血圧とは血液が動脈の中を流れる際に血管壁の内側にかかる圧力のことです。
血圧は全身の血管にありますが、通常は上腕動脈の圧力を意味します。

心臓が収縮した時に血圧は最も高く、これを「収縮期血圧(最高血圧)と呼びます。
心臓が拡張した時に血圧は最も低く、これを「拡張期血圧(最低血圧)と呼びます。

血圧は心臓から送り出される血液の量(心拍出量)、血管の太さ、血管壁の弾力性によって変わります。
心拍出量が増えると血圧は高くなり、血管が収縮して細くなったり、動脈硬化で弾力性が低下したりすると血圧は高くなります。

血圧は朝の目覚めとともに上昇して、日中は高めで、夜間は低くなります。
また激しい運動をした時、寒い時、過度のアルコール摂取時などに高くなります。
逆に軽度の運動時、暑い時、少量のアルコール摂取時などには低くなります。 ですからたまたま測った血圧が高くても高血圧とは限りません。(参考資料1

2.高血圧の基準値

高血圧は以下の基準値にしたがって判定されます。

  • 診察室で測定した場合:140/90mmHg以上
  • 家庭で測定した場合 :135/85mmHg以上
  • 24時間自由行動下血圧:130/80mmHg以上

診察室での血圧は、少なくとも2回以上の機会に測定した血圧の平均値で判断します。
家庭での血圧は、朝・晩に測って5~7日間の平均値を求めます。
24時間自由行動下血圧は、片腕に血圧を測定する帯を巻き、血圧計を腰に固定して、24時間自由に行動しながら血圧を測定する検査です。

診察室で測定した血圧と家庭で測定した血圧が異なる場合は、家庭で測定した血圧による診断を優先します。
診察室血圧140/90mmHg未満で、家庭血圧135/85mmHg以上あるいは24時間自由行動下血圧130/80mmHg以上の場合を「仮面高血圧」と呼んで治療対象です。

診察室血圧140/90mmHg以上で、家庭血圧135/85mmHg未満あるいは24時間自由行動下血圧130/80mmHg未満の場合を「白衣高血圧」と呼び、高血圧の予備軍と見なして経過観察します。(参考資料2

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3.高血圧の疫学

血圧は120/80mmHgを超えて高くなるほど、脳心血管病、慢性腎臓病の発症リスクが高くなり、その疾患による死亡リスクも高くなります。
これが高血圧の管理が必要な理由です。

日本の高血圧患者は約4300万人です。
そのうち約3100万人の血圧コントロールが不良であり、降圧剤による治療を受けているがコントロールが不良な人は約1250万人と推定されます。
さらに高血圧によって引き起こされた脳心血管病による年間死亡者数は約10万人です。

日本人は食塩摂取量が多く、これを減らすことが最重要課題です。
また肥満に伴う高血圧が増えており、改善が必要です。
これらの対策により、収縮期血圧の平均値を4mmHg低下させ、脳卒中死亡者数を年間約1万人、冠動脈疾患死亡者数を年間約5千人減らすことが目標にされています。(参考資料2

4. 高血圧の分類

正常血圧ならびに高血圧は、血圧の値によって分類されます。
まず診察室で測定した血圧の場合を示します。

分類 診察室血圧(mmHg)
収縮期血圧   拡張期血圧
正常血圧 <120 かつ <80
正常高値血圧 120-129 かつ <80
高値血圧 130-139 かつ/または 80-89
Ⅰ度高血圧 140-159 かつ/または 90-99
Ⅱ度高血圧 160-179 かつ/または 100-109
Ⅲ度高血圧 >=180 かつ/または >=110
収縮期高血圧 >=140 かつ <90

つぎに家庭で測定した場合を示します。

分類 家庭血圧(mmHg)
収縮期血圧   拡張期血圧
正常血圧 <115 かつ <75
正常高値血圧 115-124 かつ <75
高値血圧 125-134 かつ/または 75-84
Ⅰ度高血圧 135-144 かつ/または 85-89
Ⅱ度高血圧 145-159 かつ/または 90-99
Ⅲ度高血圧 >=160 かつ/または >=100
収縮期高血圧 >=135 かつ <85

参考資料2

5. 高血圧の原因

日本人の高血圧の約90%は原因が不明の「本態性高血圧」です。
何らかの遺伝的な要因に、塩分の取り過ぎなどの生活習慣に関する要因が加わって起こると考えられています。

明らかな原因によって高血圧になっている場合は「二次性高血圧」と呼ばれます。
腎臓の病気、内分泌の病気などが原因です。
原因となる病気が治ると血圧は下がります。(参考資料1

5-1. 二次性高血圧の原因となる主な病気と特徴

腎実質性高血圧

蛋白尿・血尿あり

腎血管性高血圧

急な血圧上昇、腹部血管雑音、低カリウム血症

原発性アルドステロン症

四肢脱力、低カリウム血症

クッシング症候群

中心性肥満、満月様顔貌(がんぼう)、高血糖

褐色細胞腫

発作性高血圧、動悸

甲状腺機能亢進症

頻脈、発汗、体重減少

甲状腺機能低下症

徐脈、浮腫、活動性減少

副甲状腺機能亢進症

高カルシウム血症

大動脈縮窄症

血圧上下肢差、血管雑音

睡眠時無呼吸症候群

いびき、昼間の眠気、肥満

薬剤誘発性高血圧

薬剤使用歴、治療抵抗性高血圧、低カリウム血症

参考資料3

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6. 高血圧の症状

多少血圧が高くても自覚症状はありません。
血圧がかなりの程度に高い時は、頭痛・めまいなどがみられることがあります。
ただし頭痛・めまいがあるからといって高血圧とは限りません。
結局のところ血圧を測定して始めて高血圧と分かります。(参考資料1

7. 高血圧の検査

高血圧と診断された場合に行われる検査を示します。

7-1. メタボリックシンドロームに関連する検査

脳心血管病のリスクを評価するために、糖代謝、脂質代謝、尿酸などの検査をします。

7-2. 合併症の有無を調べる検査

クレアチニン、電解質、肝機能などの血液検査、心臓エコー・冠動脈CT・頸動脈エコー・頭部MRI/MRAなどの画像検査を行います。

7-3. 二次性高血圧の診断に関する検査

症状、身体所見、他の検査結果から二次性高血圧が疑われる場合は、鑑別のため血液検査などを行います。
レニン活性、アルドステロン、コルチゾール、ACTH、メタネフリン、カテコールアミン、TSHなど(参考資料2

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8. 高血圧の改善策

脳心血管病の発症・進行・再発を予防するために、生活習慣の改善、降圧薬による治療で高血圧の改善を目指します。

8-1. 治療の基本方針

まず血圧のレベル、予後影響因子から、高血圧を高リスク、中等リスク、低リスクに層別化します。

  高値血圧 Ⅰ度高血圧 Ⅱ度高血圧 Ⅲ度高血圧
リスク第一層
予後影響因子なし
低リスク 低リスク 中等リスク 高リスク
リスク第二層
65歳以上、男性、脂質異常症、喫煙のいずれかがある
中等リスク 中等リスク 高リスク 高リスク
リスク第三層
脳心血管病、被弁膜性心房細動、糖尿病、蛋白尿のある
慢性腎臓病のいずれか、または第二層の危険因子が3つ以上ある
高リスク 高リスク 高リスク 高リスク

つぎにリスクに応じて治療方針を立てます。

高値血圧で低・中等リスクの場合

まず生活習慣を改善し、3カ月後に再評価して、改善がみられなければ薬物療法の適応です。

高値血圧で高リスクの場合

まず生活習慣を改善し、1カ月後に再評価して、改善がみられなければ薬物療法の適応です。

高血圧で低・中等リスクの場合

まず生活習慣を改善し、1カ月後に再評価して、改善がみられなければ薬物療法の適応です。

高血圧で高リスクの場合

ただちに薬物療法を開始します。

降圧目標

下記のいずれかに当てはまる場合、診察室血圧130/80mmHg未満、家庭血圧125/75mmHg未満を目指します。
ただし収縮期血圧120mmHg未満は下がりすぎです。

  • 75歳未満
  • 脳血管障害患者で両側頸動脈狭窄や脳主幹動脈の閉塞なし
  • 冠動脈疾患患者
  • 慢性腎臓病患者で尿タンパク陽性
  • 糖尿病患者
  • 抗血栓薬服用中

下記のいずれかに当てはまる場合、診察室血圧140/90mmHg未満、家庭血圧135/85mmHg未満を目指します。
ただし収縮期血圧130mmHg未満の場合は下がりすぎです。(参考資料2

  • 75歳以上
  • 脳血管障害患者で両側頸動脈狭窄や脳主幹動脈の閉塞があり、または未評価
  • 慢性腎臓病患者で尿タンパク陰性

8-2. 生活習慣の改善策

高血圧の予防時、降圧薬開始前および開始後、全ての事例で施行します。

食事療法

以下の基本方針にしたがって食事メニューを立てます。

  • BMI(体重[kg]/身長[m]2)25未満を維持するためにエネルギー摂取量を制限
  • 食塩6g/日未満に減塩
  • 野菜・果物を積極的に摂取
  • 飽和脂肪酸・コレステロールを控える
  • 不飽和脂肪酸・低脂肪乳製品を積極的に摂取
節酒

エタノールとして男性20-30mL/日以下、たとえば日本酒1合、ビール中ビン1本、焼酎半合、ウイスキーダブル1杯、ワイン2杯以下に節酒します。
女性の場合は10-20mL/日以下と男性の半分に節酒します。

運動療法

有酸素運動(動的および静的筋肉負荷運動)を毎日30分または週180分以上行います。

その他

禁煙、防寒、情動ストレスの管理も必要です。(参考資料2

8-3. 降圧薬による治療

生活習慣の改善で血圧がコントロールできない場合は、降圧薬の適応です。
主な降圧薬としてCa拮抗薬、ARB/ACE阻害薬、少量の利尿薬、β遮断薬があります。
持病に対する積極的な適応、禁忌、慎重投与となる病態・合併症の有無に応じて降圧薬を選択します。
積極的な適応がない場合はCa拮抗薬、ARB/ACE阻害薬、少量の利尿薬から選択します。

降圧薬は1日1回投与を原則としますが、24時間のコントロールのため、1日2回投与が必要なこともあります。
1剤から開始し、コントロール不良の場合は2,3剤を併用します。
以下のような降圧薬の組み合わせが推奨されます。

  • ARB/ACE阻害薬+Ca拮抗薬
  • ARB/ACE阻害薬+利尿薬
  • Ca拮抗薬+利尿薬

以上の治療でもコントロールできない治療抵抗性高血圧に対してMR拮抗薬を追加します。(参考資料2

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9. 臓器障害を合併する高血圧の治療方針

臓器障害を合併する高血圧の場合、疾患別の治療方針の概略を解説します。

9-1. 脳血管障害

脳梗塞の超急性期で血栓溶解療法を行った場合の24時間以内

180/105mmHg未満にコントロールします。

脳梗塞で血栓溶解療法の対象にならず、発症後2週間以内で、220/120mmHg以上または大動脈解離、急性心筋梗塞などを合併している場合

慎重に降圧療法を行います。

脳梗塞の慢性期で発症後1カ月以内

130/80mmHg未満にコントロールします。

脳出血急性期

収縮期血圧140mmHg未満にコントロールします。

脳出血慢性期

130/80mmHg未満にコントロールします。

破裂脳動脈瘤によるくも膜下出血

再出血予防のために降圧療法を考慮します。

9-2. 心疾患

心肥大

ARB/ACE阻害薬、Ca拮抗薬が有効です。

冠動脈疾患

130/80mmHg未満にコントロールします。

器質的冠動脈狭窄による狭心症

Ca拮抗薬、内因性交感神経刺激作用のないβ遮断薬が有効です。

冠攣縮性狭心症

Ca拮抗薬が有効です。

心筋梗塞後

β遮断薬、ARB/ACE阻害薬、MR拮抗薬が死亡率を減少させます。

左室駆出率の低下した心不全

ARB/ACE阻害薬+β遮断薬+利用薬が有効です。

左室駆出率の保たれた心不全

収縮期血圧を130mmHg未満にコントロールします。

心房細動

収縮期血圧を130mmHg未満にコントロールします。

9-3. 腎疾患

タンパク尿を伴う慢性腎臓病:A

RB/ACE阻害薬を用いて130/80mmHg未満にコントロールします。

タンパク尿・糖尿病を伴わない慢性腎臓病

ARB/ACE阻害薬、Ca拮抗薬、サイアザイド系利尿薬が有効です。

9-4. 血管疾患

大動脈解離の急性期

収縮期血圧を100-120mmHgにコントロールします。

大動脈解離の慢性期

収縮期血圧を130mmHg未満にコントロールします。

閉塞性動脈硬化症

脳心血管イベントの予防のため厳格な降圧が必要です。

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10. 他疾患を合併する高血圧の治療方針

臓器障害以外の疾患を合併する高血圧の治療方針を示します。

10-1. 糖尿病

ARB/ACE阻害薬、Ca拮抗薬、少量のサイアザイド系利尿薬を用いて130/80mmhg未満にコントロールします。

10-2. 肥満

まず食事療法、運動療法により3%以上の減量が必要です。

10-3. メタボリックシンドローム

インスリン抵抗性に対する配慮からARB/ACE阻害薬が推奨されます。

10-4. 睡眠時無呼吸症候群

夜間に高血圧を示す場合が多く、夜間を含めた血圧のコントロールが必要です。

10-5. 痛風・高尿酸血症

尿酸値を上昇させないCa拮抗薬、ARB/ACE阻害薬、ロサルタンが推奨されます。

10-6. 気管支喘息・慢性閉塞性肺疾患

気管支喘息を伴う高血圧では喘息発作を誘発するため、β遮断薬、αβ遮断薬は禁忌です。
ACE阻害薬は空咳の副作用があり推奨できません。
慢性閉塞性肺疾患を伴う高血圧ではCa拮抗薬、ARB/ACE阻害薬、少量の利用薬が利用可能です。

10-7. 肝疾患

重症の肝疾患を伴う場合、肝代謝型の降圧薬は血中濃度が上昇するため、投与量に注意が必要です。
非心臓選択性β遮断薬は肝硬変患者の消化管出血と死亡のリスクを低下させる可能性があります。
ARB/ACE阻害薬は肝臓の線維化を抑制する可能性があります。

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11. まとめ

診察室で血圧を測定した場合に140/90mmHg以上、家庭で血圧を測定した場合に135/85mmHg以上が続く時は高血圧と診断されます。
多少血圧が高くても自覚症状はありません。
しかし高血圧によって引き起こされた脳心血管病による年間死亡者数は約10万人と推定され、このリスクを減少させるために高血圧の管理が必要です。

高血圧の約90%は原因不明の原発性高血圧です。
血圧のレベル、予後影響因子から、高血圧を高リスク、中等リスク、低リスクに層別化します。
そしてリスクの程度、合併症の有無から治療法を検討し、生活習慣の改善、降圧薬などにより治療します。

以上、高血圧の概略を解説しました。
この記事を読んで高血圧の治療に役立ててみてください。

安心するためにも、一度検査をされませんか?

何もなければ、「よかったですね」と安心してお見送りすることができますので。

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参考資料

  1. 『高血圧』ってどんな病気?|日本臨床内科医会
  2. 高血圧治療ガイドライン2019|日本高血圧学会
  3. 二次性高血圧|大阪大学 老年・総合内科学

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