当院では、在宅でできる睡眠時無呼吸症候群の検査を行っています。
大きないびきがある、何度もトイレに起きる、朝起きた時に頭痛がある、日中の眠気がある、などに当てはまる方はぜひ検査しましょう。
睡眠時無呼吸症候群があると、
高血圧は2倍、夜間の心臓突然死は3倍、脳卒中は4倍、心房細動は5倍と、リスクが高まります。
居眠り運転による交通事故の発生率は7倍に跳ね上がります。トラックドライバーやタクシードライバーをしている方は、同僚や愛する家族のために、悲惨な事故を防ぐためにも、ぜひ検査を検討してください。
ご自宅で2晩検査をして、1時間あたり5回以上無呼吸があれば、睡眠時無呼吸症候群が疑われます。
検査予約や、検査に関するお問い合わせは、「かず内科クリニック 神戸垂水」までどうぞ。
3割負担の方で、初診料と検査料で自己負担分は約4,000円です。
~睡眠時無呼吸症候群が原因の世界の事故~
睡眠時無呼吸症候群は、重大な交通事故や労働災害などの原因になります。
交通事故の発生率は一般ドライバーの7倍になります。
睡眠時に何度も呼吸が止まってしまい、目が覚めてよく眠れないことがあります。
これは睡眠時無呼吸症候群と呼ばれますが、どのような病気なのでしょうか?
本記事では、睡眠時無呼吸症候群の定義、病態、原因、症状、セルフチェックシート、検査、診断、治療について解説します。
これを読めば、睡眠時無呼吸症候群の概要が分かります。
睡眠時の無呼吸について調べる際に役立ててみてください。
睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠中に何度も呼吸が止まったり、浅くなったりして、体内の酸素濃度が低くなる病気です。(参考資料1
英語ではSleep Apnea Syndromeと表わされ、以後SASと略します。
なお「睡眠時無呼吸」とは、睡眠中に10秒以上呼吸が止まることです。
また10秒以上の30%以上の気流の低下と、基準値に対して3%以上の酸素飽和度の低下を示す場合を「低呼吸」と呼びます。(参考資料2
SASは、いびきを伴う閉塞性睡眠時無呼吸症候群と、呼吸努力を伴わない中枢性睡眠時無呼吸症候群に分類されます。 最も多くみられるSASは閉塞性睡眠時無呼吸症候群です。
英語ではObstructive Sleep Apnea Syndromeと表わされ、以後OSASと略します。
成人・小児の2種類に分類され、以下の条件のうち1つ以上を満たします。
● 日中に過度の眠気を伴う
● 呼吸停止、喘ぎ、窒息感とともに目覚める
● ベッドパートナーがいびき、無呼吸に気づく
● 高血圧、気分障害、認知機能障害、冠動脈疾患、脳卒中、うっ血心不全、心房細動、あるいは2型糖尿病と診断されている
英語ではCentral Sleep Apnea Syndromeと表わされ、以後CSASと略します。
CSASはOSA以外のSASであり、8種類の病態が含まれます。
1. チェーンストークス呼吸を伴うもの
2. チェーンストークス呼吸を伴わない身体疾患によるもの
3. 高地周期性呼吸によるもの
4. 薬物または物質によるもの
5. 原発性(原因が不明なもの)
6. 乳児期の原発性
7. 未熟性に伴う原発性
8. 治療時に出現するもの
(参考資料2)チェーンストークス呼吸とは、小さい呼吸から徐々に大きい呼吸になった後、徐々に小さくなって呼吸が止まり、その後再び同様の周期をくり返す呼吸です。 中枢神経系が障害された場合や脳の低酸素状態の際にみられます。(参考資料3)
SASの定義の仕方によって、統計上の数値が多少異なりますが、SASの頻度を示します。
SASは男性で5~15%、女性で2~3%にみられ、OSASが大部分を占めます。
CSASは、健康な50歳前後の男性の1%、女性の0.1%にみられるまれな疾患です。
ただし心不全患者では、CSASの有病率が11.7~49%とされています。(参考資料2)
OSASとチェーンストークス呼吸を伴うCSASの病態と原因を解説します。
上気道にある咽頭は、嚥下、おくび、発声を行うために、柔軟に開大・閉塞を繰り返す部位です。
上気道にある「オトガイ舌筋」は、吸気時に収縮して気道を開大しますが、睡眠時は収縮力がやや低下します。
さらに上気道の虚脱性は肺容量の影響を受けますが、睡眠時に臥位となり、換気量が低下することで肺容量が減少し、上気道が虚脱しやすくなります。
つまりもともと睡眠時は、上気道が虚脱しやすい状態なわけです。
OSASでは、肥満により咽頭周囲へ軟部組織が沈着して、上気道径が小さくなっています。
また延髄の呼吸中枢によって調整される換気量の増加(換気ドライブ)が不安定になると報告されています。
換気ドライブはオトガイ舌筋の支配神経である舌下神経に作用するため、OSASではオトガイ舌筋の機能が低下しています。
この2つの要因のもと、睡眠時に上気道が閉塞すると考えられています。
なお上気道が完全に閉塞した場合に無呼吸となり、不完全に閉塞した場合は低呼吸になります。(参考資料2
チェーンストークス呼吸は、心不全などにおいて見られる肺うっ血、換気応答の亢進などの多因子が影響して、呼吸調節が不安定になることで起こります。
心不全の患者において、昼間に下肢へ貯留した水分が、睡眠時に臥位となることで上半身へシフトし、肺うっ血が助長されて、チェーンストークス呼吸が現れると報告されています。
心不全によってSASが悪化し、SASによって心不全が増悪するといった悪循環におちいります。(参考資料2
OSASおよびCSASの症状を解説します。
OSASでは、いびき、日中の過度の眠気、睡眠中に窒息感とともに目覚めること、あえぎ呼吸、不眠、睡眠中の呼吸中断がみられます。
最も信頼できる症状は、睡眠中の窒息感やあえぎ呼吸です。
日中の過度の眠気は、CPAP治療、OA療法によるOSASの治療によって改善します。
これらの症状からOSASを疑いますが、客観的な検査に比べると信頼度が劣るため、診断の根拠とはしません。(参考資料2
CSASでは、疲労感、夜間呼吸困難、睡眠中の無呼吸がみられます。
ただし特異的な症状ではないため、診断の根拠とはしません。(参考資料2
心不全、心房細動、脳卒中がある場合、CSASを積極的に疑います。(参考資料2
OSASでみられる症状を問うセルフチェックシートがあります。
ただしセルフチェックシートだけでOSASの診断はできません。
セルフチェクシートからOSASを疑う場合、OSASの検査を行います。
CSASを対象としたセルフチェックシートは今のところありません。
チェックが1~2個の場合:
一時的ならば問題ありません、慢性的であればぜひ検査してください。
チェックが3~4個の場合:
OSASの可能性があります。ぜひ検査してください。
チェックが5個以上:
もしかしたらすでにOSASかもしれません。早めに検査してください。(参考資料4
自己チェックシートなどから睡眠時無呼吸症候群を疑った場合、内科や耳鼻科を受診してください。
まずは個人の医院、クリニックを受診しますが、検査や治療のために総合病院の専門家へ紹介されるかもしれません。
病院によっては睡眠科やいびき外来、無呼吸外来などが設置されていることがあります。
SASの診断には終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)が行われます。
PSG検査に含まれる検査項目は、脳波、眼電図、顎筋電図、心電図、気流、呼吸努力、酸素飽和度です。
PSG検査では、呼吸事象(イベント)として無呼吸、低呼吸、呼吸努力関連覚醒反応、チェーンストークス呼吸を伴う中枢性無呼吸、低換気を判定します。
さらにカメラやマイクロフォンを設置し、映像や音声の記録を行い、訓練された検者が記録を常時監視しながら行うアテンドPSGもあります。(参考資料2
以下のどちらかの基準を満たせば、OSASと診断されます。
診断基準 ①
以下の条件のうち1つ以上を満たす
1. 日中に過度の眠気を伴う
2. 呼吸停止、喘ぎ、窒息感とともに目覚める
3. ベッドパートナーがいびき、無呼吸に気づく
4. 高血圧、気分障害、認知機能障害、冠動脈疾患、脳卒中、うっ血心不全、心房細動、あるいは2型糖尿病と診断されている
且つPSG検査で無呼吸低呼吸指数(睡眠時間1時間当たりの無呼吸と低呼吸の総数)が5以上を示す
(AあるいはB)+ C + Dでチェーンストークス呼吸を伴うCSASと診断されます。
A) 以下のうち最低ひとつが存在する
(ア) 眠気
(イ) 入眠や睡眠維持の困難、頻回な中途覚醒、非回復性の睡眠
(ウ) 呼吸困難による覚醒
(エ) いびき
(オ) 無呼吸の観察
B) 心房細動や粗動、うっ血性心不全、あるいは神経疾患が存在する
C) PSG検査で以下の全てが認められる
(ア) 睡眠1時間あたり5回以上の中枢性無呼吸あるいは中枢性低呼吸
(イ) 中枢性無呼吸と中枢性低呼吸の総数が無呼吸と低呼吸の総数のうち50%以上を占める
(ウ) 換気パターンがチェーンストークス呼吸の基準を満たす
D) この障害は、その他の睡眠障害、薬物や物質の使用では、説明できない(参考資料2
簡易モニターportable monitorは、自宅で手の指や鼻にセンサーをつけて、いびきや呼吸の状態を調べる検査です。
併存疾患がなく、中等度から重症のOSASが疑われる場合、PSGの代替として診断に用いられます。
CSASの判定制度は低いため、診断には使用しません。(参考資料2
OSASならびにCSASの治療法を解説します。
OSASの治療には、CPAP治療、OA療法、減量療法、鼻・咽頭での気道開存(口蓋扁桃、アデノイド摘出)手術などがあります。
まずCSAの基礎疾患となる心不全に対して薬物療法、心房細動に対してペースメーカー治療などを行います。
原疾患の治療をしても中等度以上のCSAが残存する場合、さらにCPAP治療を行います。
CPAP治療に忍容性がない場合、adaptive servo ventilation(ASV)治療を検討します。(参考資料2
ASV治療は、CPAP治療に加えて、無呼吸時に必要に応じてバックアップ換気を行うものです。(参考資料5
CPAP治療、ASV治療によって左室駆出率や運動耐容能の低下といった心血管障害が改善します。(参考資料2
OSASでは高血圧、糖尿病、内臓脂肪型肥満などの合併症がみられます。
OSASは二次性高血圧の主要な原因のひとつです。
特に治療抵抗性高血圧や夜間早朝高血圧ではOSASの合併に注意してください。
CPAP治療によってOSAS患者の降圧効果が期待できます。(参考資料2
OSASは2型糖尿病発症の危険因子となる可能性が高い病気です。
ただしCPAP治療で糖代謝の改善が得られることを示すエビデンスは不十分です。(参考資料2
内臓脂肪型肥満はOSASの重要な要因です。
3カ月以内のCPAP治療でOSAS患者の内臓脂肪量は減少しないことが報告されています。(参考資料2
睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠中に何度も呼吸が止まったり、浅くなったりして、体内の酸素濃度が低くなる病気です。
いびきを伴う閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)と、呼吸努力を伴わない中枢性睡眠時無呼吸症候群(CSAS)に分類されますが、OSASが大半を占めます。
OSASは肥満が原因で、CSASは心不全などが原因で起こります。
OSASでは、いびき、日中の過度の眠気、睡眠中に窒息感とともに目覚めること、あえぎ呼吸、不眠、睡眠中の呼吸中断がみられます。
CSASでは、疲労感、夜間呼吸困難、睡眠中の無呼吸がみられます。
OSAS対象のセルフチェックシートでOSASを疑った場合、内科や耳鼻科を受診してください。
診断のために終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)が行われます。
OSASの治療には、CPAP治療、OA療法、減量療法、鼻・咽頭での気道開存(口蓋扁桃、アデノイド摘出)手術などがあります。
まずCSAの基礎疾患となる心不全に対して薬物療法、心房細動に対してペースメーカー治療などを行います。
いびきや日中の過度の眠気で困っている場合は、早めに専門医に診てもらいましょう。
参考資料
1)睡眠時無呼吸症候群|近畿中央呼吸器センター
2)睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020|日本呼吸器学会
3)チェーンストークス呼吸|日本救急医学会ホームぺージ
4)SAS度セルフ診断|SAS対策支援センター
5)Topics 3 Adaptive servo ventilation|日本呼吸器病学会 - PDF
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