こんにちは。かず内科クリニック神戸垂水の院長の中村和宏です。
健康診断でコレステロールが高いのに放置していませんか?
コレステロールが高いまま放置していると、心筋梗塞や脳卒中、大動脈解離や大動脈瘤の原因になります。
一方で、コレステロールは、細胞膜やホルモン、胆汁酸の原料でもあります。
高脂血症の治療は、リスク(年齢、性別、たばこ、高血圧があるか、糖尿病があるか、心臓発作や脳卒中を起こしたか、家族に心臓発作があるかetc)に応じて、どれくらい悪玉コレステロールを下げるか、が決まっています。
脂質異常症は、高血圧、糖尿病と並んで知られる生活習慣病です。
それでは脂質異常症とは、どのような病気なのでしょうか?
本記事では、脂質異常症の定義、診断基準、症状、動脈硬化性疾患に対する影響、原因、治療について解説します。
これを読めば、脂質異常症の概略が分かります。
脂質異常症を治療する際に役立ててみてください。
脂質異常症とは、血液中の脂質の値が基準値から外れた状態です。
具体的には、LDLコレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)、HDLコレステロール(いわゆる善玉コレステロール)、トリグリセライド(中性脂肪)の血中濃度の異常を含みます。
脂質異常症は動脈硬化の促進と関連するため治療が必要です。
脂質異常症は、脂質の血中濃度を測定し、以下の基準にそって診断します。
※10時間以上の絶食を空腹時、空腹時であることを確認できない場合を随時と呼びます。
脂質異常症の自覚症状はほとんど全くありません。
一部の方で、上まぶたの内側部に黄色の扁平な隆起(眼瞼黄色腫)がみられます。
脂質異常症が長期間続くと、動脈硬化が進んで動脈硬化性疾患を引き起こします。
脂質異常症は冠動脈性疾患、脳梗塞の発症率や死亡率に影響します。
高LDLコレステロール血症は、男性における冠動脈疾患の発症率や死亡率を高めます。
女性では有意な影響はありません。
一生の間に冠動脈疾患を発症する確率(生涯リスク)は以下のとおりです。
45歳の男性において
75歳の男性において
45歳の女性において
75歳の女性において
高LDLコレステロール血症は、男女ともに脳梗塞の発症率を高めます。
逆にLDLコレステロールが高いほど脳出血の発生率は低くなります。
高コレステロールが増加すると、男女ともに冠動脈疾患で死亡する確率が高まります。
また総コレステロールが増加すると、脳梗塞を発症する確率が高まります。
Non-HDLコレステロールは、LDLコレステロールと同様に心筋梗塞の発症に関連します。
Non-HDLコレステロール値が170mg/dL前後から、冠動脈疾患・心筋梗塞の発症・死亡リスクが高まります。
45歳の男性が一生の間に冠動脈疾患を発症する確率 は以下のとおりです。
なお女性では有意な差はみられません。
また Non-HDLコレステロールは、脳卒中に関しては関連がないという報告があります。
HDLコレステロールの低値は、冠動脈疾患や脳梗塞の発症リスクとなります。
空腹時トリグリセライド150mg/dL 以上、随時トリグリセライド175mg/dL以上で冠動脈疾患の発症率が増加します。
過食、運動不足、肥満、喫煙、アルコールの飲み過ぎ、ストレスなどが原因となって、脂質異常症は起こります。
食事により飽和脂肪酸をとりすぎるとLDLコレステロールが増えます。
食事中のコレステロールもLDLコレステロールを増やします。
ただし個人差があり、飽和脂肪酸よりも影響が少ないとされます。
エネルギー量をとりすぎるとトリグリセライドが増えます。
運動不足・肥満・喫煙によってHDLコレステロールが低くなります。
のうち2項目以上が当てはまる場合、家族性高コレステロール血症と診断します。
300人に1人程度、冠動脈疾患の30人に1人程度認められます。
冠動脈疾患を発症する確率が10~20倍、末梢動脈疾患を発症する確率が5~10倍になると報告されています。
そのため早期診断・治療が必要です。
脳卒中に対する影響は明確でありません。
他の病気によって引き起こされる脂質異常症です。
脂質異常症においては、病気にならないように予防すること、病気の重症化を防ぐことが大切です。
一次予防:生活習慣の改善により病気の発生を防ぐこと
二次予防:病気や障害の重症化を防ぐこと
脂質異常症の治療は以下のような手順にそって行います。
問診、身体所見、検査結果から脂質異常症を診断
以下の手順で危険因子を評価し、リスクを層別化します。
1)冠動脈疾患またはアテローム血栓性脳梗塞があるか?
2)糖尿病、慢性腎臓病、末梢動脈疾患のいずれかがあるか?
3)久山町研究のスコア①~⑥の合計点を算出
①性別
②収縮期血圧
③糖代謝異常(糖尿病は含まない)
④血清LDLコレステロール
⑤血清HDLコレステロール
⑥喫煙
4)スコアの合計から予測される10年間の動脈硬化性疾患の発症リスクを判定します。
※糖尿病において、PAD、細小血管症(網膜症、腎症、神経障害)合併時、または喫煙ありの場合に考慮する。
※※急性冠症候群、家族性高コレステロール血症、糖尿病、冠動脈疾患とアテローム血栓性脳梗塞のいずれかを合併する場合に考慮する
高血圧、糖尿病、その他の疾患の管理目標を設定します。
本記事では詳細を省略します。
脂質異常症の治療は食事療法が重要です。
脂質異常症の原因となる飽和脂肪酸、コレステロール、エネルギー量を制限します。
飽和脂肪酸を多く含む食材は以下のとおりです。
不飽和脂肪酸はLDLコレステロールを減らす作用をもちます。
また青魚に多く含まれる多価不飽和脂肪酸はトリグリセライドを下げます。
ただしとりすぎるとエネルギー過多となるため、適量摂取が原則です。
不飽和脂肪酸を多く含む食材は以下のとおりです。
コレステロールを多く含む食材は以下のとおりです。
エネルギー摂取量が過剰にならないように注意すべき食材
ヨーグルトは乳製品であり、飽和脂肪酸、コレステロールを多く含むため、脂質異常症の方は避けたほうがよいでしょう。
バナナにはペクチンという栄養素が含まれます。
ペクチンは食物繊維の一種でLDLコレステロールを下げる効果があるため、バナナは食べてよいでしょう。
ただし食べ過ぎるとカロリー過多となるため、Ⅰ日Ⅰ本以内にしてください。
中等度強度の有酸素運動を1日30分以上、できれば毎日、週180分以上続けることが推奨されます。
HDLコレステロールを増やし、トリグリセライドを減らす効果があります。
動脈硬化性疾患やメタボリックシンドロームを予防・治療します
1)運動時の脈拍から推定
心拍数(脈拍/分)= 138 - (年齢/2 )
2)自覚的な感覚から推定
楽である~ややきついと感じる程度
速歩、スロージョギング、サイクリング、水泳、社交ダンス、ベンチステップ運動など
生活習慣の改善によっても脂質管理が不十分な場合、薬物療法を考慮します。
糖尿病、慢性腎臓病、非心原性脳梗塞、末梢動脈疾患のある方はでは、早期の薬物療法を考慮します。
↓↓↓:25%以上低下、↓↓:20~25%低下、↓:10~20%低下、↑↑:20~30%上昇、↑:10~20%上昇、ー:-10~10%の変化
各薬剤の効果と副作用を考慮しながら選択します。
高LDLコレステロール血症にはスタチンが推奨されます。
シンバスタチン、アトルバスタチンなどを服用中は、グレープジュースの摂取を控えてください。
陰イオン交換樹脂を服用中は、併用する薬物の吸収減少や脂溶性ビタミンの欠乏に注意が必要です。
脂質異常症とは、血液中の脂質の値が基準値から外れた状態です。
LDLコレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)、HDLコレステロール(いわゆる善玉コレステロール)、トリグリセライド(中性脂肪)の血中濃度の異常を含みます。
脂質異常症の自覚症状はほとんど全くありません。
しかし脂質異常症が長期間続くと、動脈硬化が進んで、動脈硬化性疾患を引き起こします。
冠動脈性疾患、脳梗塞の発症率や死亡率に影響します。
脂質異常症の原因は、過食、運動不足、肥満、喫煙、アルコールの飲み過ぎ、ストレスなどです。
脂質異常症においては、病気にならないように予防すること、病気の重症化を防ぐことが大切です。
危険因子の評価およびリスクを層別化し、リスクに応じて治療指針を決定します。
生活習慣の改善および薬物療法によって治療します。
安心するためにも、一度検査をされませんか?
何もなければ、「よかったですね」と安心してお見送りすることができますので。
参考資料
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