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大人になってから受けたい予防接種
対象者・接種スケジュールを解説

一昔前までは、予防接種は子どもが受けるものといったイメージがありました。
最近では、コロナウイルスの予防接種が普及し、大人の予防接種も一般的になっています。
ところで大人になってから受けたい予防接種は、ほかにもいろいろあることはご存じでしょうか?

本記事では、大人の予防接種の必要性、予防接種の種類、対象者、接種スケジュール、注意事項、どこで受ければよいか、費用について解説します。
これを読めば、大人の予防接種の概要が分かります。
大人が予防接種を受ける際に役立ててみてください。

大人の予防接種とは

予防接種とは、毒性を弱めた病原体や毒素を、前もって投与しておくことにより、その感染症にかかりづらくすることです。
子どもだけでなく、大人でも接種すべき予防接種があります。

VPDとは

VPDとは、Vaccine Preventable Diseaseの略語で、ワクチンで防ぐことができる病気や感染症の総称です。【1】
VPDは、子どもにも大人にもあります。
VPDに対するワクチンをまだ接種していない方は、接種を検討してください。

思春期・青年期のVPD

思春期・青年期に注意すべきVPDをご紹介します。【2】

思春期・青年期に感染しやすいVPD
  • 子宮頸がん(HPV感染症)
  • B型肝炎、肝硬変、肝臓がん
  • 髄膜炎菌感染症
思春期以降にかかると重症化するVPD
  • 麻疹(はしか)
  • 風疹
  • 水痘(みずぼうそう)
  • おたふくかぜ
  • インフルエンザ
  • 日本脳炎
予防接種の免疫力が弱くなっているVPD
  • 百日せき
  • 破傷風

子育て世代のVPD

子育て世代で注意すべきVPDをご紹介します。【2】

妊娠中にかかると重症化するVPD
  • 麻疹
  • 風疹
  • 水痘
  • おたふくかぜ
妊娠中のワクチンで赤ちゃんがかかりにくくなるVPD
  • インフルエンザ
  • 百日せき
予防接種の免疫力が弱くなっているVPD
  • 日本脳炎
  • 破傷風

ミドル世代のVPD

ミドル世代で注意すべきVPDをご紹介します。【2】

免疫力が弱くなる世代がかかりやすいVPD
  • インフルエンザ
  • 帯状疱疹
妊娠中にかかると重症化するVPD
  • 風疹
予防接種の免疫力が弱くなっているVPD
  • 百日せき
  • 日本脳炎
  • 破傷風
夫婦・家族間で感染しやすいVPD
  • B型肝炎、肝硬変、肝臓がん
大人がかかると重症化するVPD
  • 麻疹
  • 水痘
  • おたふくかぜ

シニア世代のVPD

シニア世代で注意すべきVPDをご紹介します。【2】

シニア世代が注意すべきVPD
  • インフルエンザ
  • 高齢者の肺炎球菌感染症
体力・免疫力低下でかかりやすいVPD
  • 百日せき
  • 日本脳炎
  • 破傷風
  • 帯状疱疹
夫婦・家族間で感染しやすいVPD
  • B型肝炎、肝硬変、肝臓がん

大人の予防接種の種類・対象者・接種スケジュール

大人で行われる予防接種の種類と対象者・接種スケジュールについて解説します。

子宮頸がんワクチン(HPVワクチン)

1997年4月2日から2008年4月1日生まれの女性で、過去にHPVワクチンを3回受けていいない方は、2022年4月から2025年3月の3年間、HPVワクチン(2価・4価・9価)を定期接種可能です。(キャッチアップ接種 )
不活化ワクチンで、キャッチアップ接種対象の女性以外でも任意接種ができます。

過去に1~2回、2価または4価ワクチンを受けている場合、以後も同じワクチンを接種することが原則です。
ただし医師と相談の上で途中から9価に変更できます。

2価ワクチン
  • 10代~20代前半で3回接種が推奨される
  • 1回目と2回目の間は1カ月以上あける
  • 1回目と3回目の間は6カ月以上あける

標準的な接種ができなかった場合は、

  • 1回目と2回目の間は1カ月以上あける
  • 1回目と3回目の間は5カ月以上あける
  • 2回目と3回目の間は2カ月半以上あける
4価・9価ワクチン

10代~20代前半で3回接種が推奨される

  • 1回目と2回目の間は2カ月以上あける
  • 1回目と3回目の間は6カ月以上あける

標準的な接種ができなかった場合は、

  • 1回目と2回目の間は1カ月以上あける
  • 2回目と3回目の間は3カ月以上あける 【2】【3】

髄膜炎菌感染症ワクチン

不活化ワクチンで、任意接種の対象です。
接種対象者は、2歳以上55歳以下の方で、以下の要件を満たす方です。

  • 髄膜炎菌感染症流行地域へ渡航する方
  • 学校の寮などで集団生活を送る方、送る予定の方
  • マスクギャザリングイベントに参加する方
  • リスクが高い方

10代~20代前半で1回接種が推奨されます。
リスクの高い方(HIV感染症、補体欠損症、無脾症など)は2回目の追加接種が可能です。
1回目と2回目の間は8週間以上あけること。【2】【3】

水痘ワクチン

生ワクチンの任意接種です。
接種対象者は以下のとおりです。

  • 水痘予防:2回の接種歴がなく感染歴のない方
  • 帯状疱疹予防:50歳以上の方

10代~40代で2回接種が推奨されます。
1回目と2回目の間は1カ月以上あけること
ただし帯状疱疹予防の場合は1回接種です。【2】【3】

麻疹・風疹ワクチン(MRワクチン)

生ワクチンの任意接種です。
追加接種対象者は、2回の接種歴がなく感染歴がない方です。
10代~50代で2回接種が推奨されています。
1回目と2回目の間は1カ月以上あけること。

1990年度以前の生まれの方は定期接種で2回の接種がないため、追加接種が推奨されています。
また1962年4月2日から1979年4月1日生まれの男性は、2024年末まで風疹の第5期の定期接種を受けられます。【2】【3】

おたふくかぜワクチン

生ワクチンの任意接種です。
追加接種対象者は2回の接種歴がなく感染歴がない方です。
10代~40代で2回接種が推奨されています。
1回では効果がないため、2回目の追加接種が必要です。
1回目と2回目の間は1か月以上あけること。【2】【3】

B型肝炎ワクチン(ビームゲン)

不活化ワクチンの任意接種です。
接種推奨は医療従事者、透析患者、海外長期滞在者などのハイリスク者のうち希望者はだれでも受けられます。
WHOの勧告ではHBs抗体価が10mIU/mL未満になった場合に追加接種が必要です
20代~60代で3回接種が推奨されています。
1回目と2回目の間は4週間以上あけること
1回目と3回目の間は20週以上あけること【2】【3】

インフルエンザワクチン

不活化ワクチンの定期接種です。
追加接種対象者は、65歳以上の方、60~65歳で心臓・呼吸器・腎臓の機能障害によってADLが低下している方、HIVウイルスにより日常生活がほとんど全く不可能な方です。
毎年秋に1回接種します。
ただし任意接種は希望者ならだれでも受けられます。【2】【3】

百日せきワクチン

不活化ワクチンの任意接種です。
ジフテリア・百日せき・破傷風の三種混合ワクチンとして接種します。
10代~60代で10年ごとに1回の接種が推奨されています。
ただし小児期に3回接種していない方は、3回になるまで接種し、1回目と2回目の間は3~8週間以上、1回目と3回目の間は12~18カ月あけること。【2】【3】

破傷風ワクチン

不活化ワクチンの任意接種です。
ジフテリア・百日せき・破傷風の三種混合ワクチンとして接種します。
10代~60代で10年ごとに1回の接種が推奨されています。
ただし小児期に3回接種していない方は、3回になるまで接種し、1回目と2回目の間は3~8週間以上、1回目と3回目の間は12~18カ月あけること。【2】【3】

日本脳炎ワクチン

不活化ワクチンの任意接種です。
追加接種対象者は、接種歴が3回ない方です。
10代~60代で3回接種が推奨されます。
1回目の1~4週間後に2回目を接種、その1年後に3回目を接種します。【2】【3】

帯状疱疹予防ワクチン(シングリックス)

不活化ワクチンの任意接種です。
接種対象者は、50歳以上の方、18歳以上でリスクの高い方です。
50代~60代で2回または1回の接種が推奨されています。
1回目と2回目の間は2~6カ月開けること。
18歳以上でリスクの高い方の場合、間は1~2カ月とします。【2】【3】

従来の水痘ワクチンとの違い
  水痘ワクチン シングリックス
予防できる病気 水痘・帯状疱疹 帯状疱疹
ワクチンの種類 生ワクチン 不活化ワクチン
接種対象者 50歳以上の方 50歳以上の方または帯状疱疹にかかるリスクの高いと考えられる18歳以上の方
接種期間 1回のみ 2カ月以上あけて6カ月以内に2回
費用 1回約6000円~8000円 1回約18,000円~25,000円

成人用肺炎球菌ワクチン(ニューモバックス)

不活化ワクチンの定期接種です。
接種対象者は高齢者または肺炎球菌による疾患にかかるリスクが高い方です。
60代後半で1回接種が推奨されています。
ただし60歳~64歳で決められた基礎疾患がある方は定期接種が可能です。【2】【3】

RSウイルスワクチン(アレックスビー)

不活化ワクチンの任意接種です。
接種対象者は60歳以上の方です。【2】【3】
効果の持続性に関するデータが得られておらず、追加接種の必要性や時期についての情報は ありません。

海外渡航ワクチン

外国では日本にいるときよりも感染リスクの高い病気があります。
予防接種は罹患や重症化を防ぐことが目的です。
必要な予防接種は、渡航先、渡航期間、渡航目的、予防接種歴などによって異なります。

予防接種 対象者
黄熱 感染リスクのある地域へ渡航する方
入国に際して接種証明書が必要な国へ渡航する方
A型肝炎 流行地域へ渡航する70歳以下の方
B型肝炎 血液や体液に接触する可能性のある方
破傷風 渡航先でケガをする可能性のある方
狂犬病 動物と直接接触する方
イヌ、キツネ、コウモリなどが多い地域で医療アクセスがよくない地域へ渡航する方
ポリオ 流行地域へ渡航する方
日本脳炎 流行地域へ長期間滞在する方
麻疹・風疹 疾患への免疫が不十分な方
インフルエンザ 流行時期または流行地域へ渡航する方
髄膜炎菌 流行地域へ渡航する方
留学などに際して接種証明書が必要な方
学生寮や宿舎などで共同生活する予定の方

大人の予防接種の注意事項

予防接種の目的、効くしくみ、接種する際の注意事項、接種後の注意事項、予防接種による健康被害救済制度について解説します。

予防接種の目的

予防接種を受けると、一人ひとりが病気を予防できます。
かかった場合でも後遺症を残したり、死亡したりする重症化を予防できるのがメリットです。
感染症にかかって周囲の人にうつす二次感染を減らせます。

一度に大勢の人が感染して病院に受診し、病院の機能が維持できなくなるのを防ぎます。
多くの医療従事者が感染して、医療を提供できなくなるのを防ぎます。
予防接種は受けた本人だけでなく、社会全体を守ることにつながるわけです。【4】

予防接種が効くしくみ

感染症にかかると、病原体に対する免疫ができ、次に同じ病原体が入ってきた際に攻撃する仕組みができます。
予防接種はこの免疫を利用して、感染症にかかりにくい体をつくる仕組みです。
予防接種には、生きている病原体を用いたワクチン、病原体の一部の成分や不活化した病原体を用いるワクチン、病原体の出す毒素を用いたワクチンがあります。【4】

生きている病原体を用いたワクチン

弱毒生ワクチンと呼ばれるワクチンです。
ワクチンを接種した際に、症状が軽くてすむように、病原体の毒性を弱めていますが、実際の感染と同じように免疫ができます。
免疫力が低下した方につかうと、感染症そのものの症状が出る可能性があるのがデメリットです。
麻疹、風疹、おたふくかぜ、水痘ワクチンがあります。【4】

病原体の一部の成分や不活化した病原体を用いるワクチン

不活化ワクチン・遺伝子組み換えワクチン・多糖体ワクチン・蛋白結合ワクチン・サブユニットワクチンなどのワクチンです。
病原性をなくした病原体、または免疫をつくるのに必要な成分のみを接種します。
接種しても感染症の症状は出ることはなく、免疫力が低下した人でも接種できます。
ただし生ワクチンよりも効果が弱いため、複数回の接種が必要です。
生ワクチン以外の多くのワクチンが含まれます。【4】

病原体の出す毒素を用いたワクチン

トキソイドと呼ばれるワクチンです。
病原体の出す毒素の病原性をなくして摂取します。
免疫力が低下した人でも接種できます。
ただし生ワクチンよりも効果が弱いため、複数回の接種が必要です。
ジフテリア、破傷風ワクチンがあります。【4】

接種する際の注意事項

以下のような場合はワクチンを接種できません。

  • 明らかに発熱しているとき(37.5℃以上)
  • 重篤な急性疾患にかかっているとき
  • 摂取するワクチンや成分でアナフィラキシーを起こしたことがあるのが明らかな場合
  • 妊婦は生ワクチンを接種できません
  • その他、接種する医師が接種できないと判断したとき

さらに注意の要するケースを示します。

  • 心臓、腎臓、肝臓、血液、発育などで基礎疾患がある方
  • 予防接種後、2日以内に発熱やアレルギーを起こしたことがある方
  • 過去にけいれんを起こしたことがある方
  • 免疫不全の方、近親者に先天性免疫不全症の方がいる場合
  • ワクチンの成分に対してアレルギーを起こすおそれがある方
  • ワクチンのバイアルにラテックスが含まれたゴム栓がついている場合、ラテックス過敏症がある方

【3】ワクチン接種に注意が必要なとき

接種後の注意事項

よく見られる副反応

  • 皮膚の発赤、皮膚が硬くなる(硬結)、痛みなど
  • 発熱、発疹

まれに見られる重い副反応

  • アナフィラキシー
  • 脳炎、脳症

【3】ワクチンの副反応について

予防接種による健康被害救済制度

ワクチンは、ほかの医薬品と同じ様に副作用が起こることがあります。
そしてまれに健康に被害を及ぼすことがあり、健康被害を受けた方に対して公的な救済制度が設けられています。

ワクチンの接種と健康被害の間に因果関係が認められた場合、以下のような救済給付が実施されます。

  • 医療を受けるために要した諸費用
  • 障害が残った場合の障害年金
  • 死亡時の葬祭料および一時金、遺族年金

大人の予防接種はどこで受ければいいの?

予防接種の種類によって異なるため、かかりつけの病院や各市町村で確認してください。

大人の予防接種・自費ワクチンの費用

各ワクチンの費用を示します。
定期接種か任意接種かによって異なります。
また施設によっても異なりますので、あくまでも参考としてください。

【3】ワクチン情報

子宮頸がんワクチン

定期接種の場合は無料、任意接種の場合は2価、4価なら3回で約4万円~5万円、9価なら3回で約8万円~10万円

髄膜炎菌感染症ワクチン

1回約19,000円~25,000円

水痘ワクチン

定期接種の場合は無料、任意接種の場合は1回約4000円~6000円

麻疹・風疹ワクチン

定期接種の場合は無料、任意接種の場合は8000円~10,000円

おたふくワクチン

1回約3000円~8000円

B型肝炎ワクチン

任意接種の場合は1回約5000円~8000円

インフルエンザワクチン

1回3000円~5000円

百日せきワクチン

百日せきジフテリア破傷風混合ワクチンで1回約10,000円

日本脳炎ワクチン

定期接種の場合は無料、任意接種の場合は1回5000円~8000円

破傷風ワクチン

定期接種の場合は無料、任意接種の場合は破傷風単独で1回約3000円

帯状疱疹予防ワクチン

1回約18,000円~25,000円

成人用肺炎球菌ワクチン

定期接種の場合は1回0~5000円、任意接種の場合は1回約7500円~9000円

RSウイルスワクチン

1回約25,000円

海外渡航ワクチン

自由診療として、接種する医療機関が個別に費用を定めています

まとめ

子どもだけでなく、大人でも接種すべき予防接種がいろいろあります。
世代別に注意すべき感染症をあげ、それらの感染症に効果のある予防接種の種類・対象者・接種スケジュールをご紹介しました。
また大人の予防接種の注意事項、どこで受ければよいのか、費用について解説しました。
この記事を読んでいただき、大人の予防接種の概要が分かったと思います。
年齢やライフスタイルに応じて、適切な予防接種を受けてください。

参考サイト

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